単一細胞に対する定量的遺伝子発現解析のためのマイクロチャンバーアレイの開発

2015

概要

近年、細胞集団を構成する一つ一つの細胞の遺伝子発現レベルが不均一であることが明らかになってきており、単一細胞レベルでの遺伝子発現解析の実現が強く要求されている。しかし、従来の細胞に対する遺伝子発現解析は多数の細胞を用いて行われるため、その細胞集団における平均値の発現レベルしか得られない。本研究では、マイクロチャンバーアレイを用いた単一細胞に対する、RT-PCR(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)による高スループットな遺伝子発現解析手法を提案する。

単一細胞解析のコンセプト

具体的には、単一細胞を誘電泳動力によりマイクロチャンバーに捕捉し、RT-PCRにより各細胞の遺伝子発現レベルを定量的に測定する。単一細胞でRT-PCRを実現するため、くし形ITO(Indium Tin Oxide,酸化インジウムスズ)電極上に形成されたマイクロチャンバーアレイデバイスに基づいて、PDMSのマイクロチャネル内に反応チャンバーが形成された新しいデバイスを開発した。現在、基礎的検討のため、抽出されたRNAを用いてデバイス内でRT-PCRの反応条件の最適化を行っており、具体的には温度変化及びPDMS表面修飾の最適化によりチャンバー内でのPCR後の蛍光強度の増加を確認しデバイス上でのPCRに成功した。

マイクロチャンバー内におけるPCR反応。PCR前(左)と後(右)。テンプレートとしてRNAから逆転写したcDNAを用いた。

研究予算

  • 科学技術振興機構