尿細管細胞と一次繊毛

腎尿細管細胞実験のための新しいマイクロ流体デバイス

2017

概要

腎臓は血液を濾過することで、溶質を尿として排泄している。この腎機能においてもっとも重要な役割を果たしているのが、尿細管細胞のイオンチャネルである。尿細管細胞上には一次繊毛と呼ばれる小さな細胞器官が細胞外へ突出する形で生えている。この一次繊毛は尿流をせん断応力として感知することができ、感知したせん断応力に応じて細胞増殖抑制や、イオンチャネル調節が行われている。生体外での従来の実験方法では、血清飢餓なく一次繊毛を発現させることが難しく、また、一次繊毛に流れによるせん断応力という物理的刺激を与えながら薬剤反応を観察することができていなかった。

腎尿細管細胞実験のためのマイクロ流体デバイス

われわれの研究グループでは、尿細管細胞にせん断を負荷しつつ、薬剤に対する応答を調べることができる新しいマイクロ流体細胞培養デバイスの開発を行っている。これまでに開発したマイクロ流体細胞培養デバイスを用いた実験によって、血清飢餓などの特殊な環境を必要とせずに、一次繊毛が形成された状態をin vitro実験系で再現することに成功した。さらに、流れによるせん断応力によって一次繊毛が曲げられたときに起きる細胞内カルシウム濃度の上昇を観察することにも成功した。

マイクロ流体デバイスを用いて、尿細管細胞にせん断を負荷しつつ培養できる実験系を構築

共同研究

  • 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科

研究予算

  • 日本医療研究開発機構 AMED