概要
深海には熱水噴出孔と呼ばれる様々な資源・生物が集まる場所が存在する。このような場所での探査を行うために、海中探査機に搭載可能な、小型で連続計測可能な化学センサの開発が行われてきている。われわれの研究グループでは、深海環境における微生物活性度測定するために、マイクロ流体デバイスを応用したATP(アデノシン三リン酸)濃度計測システム"Integrated In Situ Analyzer for ATP(IISA-ATP)"の開発と運用をこれまで行ってきた。従来、このIISA-ATPでは複数の標準液を用いてATP濃度の現場校正を行っていたが、この校正手法を高度化することで、より小型で信頼性の高いシステムへ改良している。

そこで、光分解化合物であるcaged ATPを現場でUV-LEDを使って分解し、標準液として利用する新しい校正手法を提案している。この手法では、複数の標準液を用意する必要がなくなり、また測定サンプルに標準液を添加することによって海水サンプルに含まれる測定阻害物質の影響を受けなくなるというメリットも生まれる。現在までに、caged ATP分解用のUV照射流路デバイスを設計、試作し、実証実験を行った。その結果、このデバイスを用いることで、UV照射量と比例したcaged ATP分解量が得られることがわかった。また、LEDの点灯制御によって再現性よくcaged ATP分解を行うことができることも確認した。今後システムの評価を重ね、IISA-ATPに組み込んで実深海環境での運用を目指す。
共同研究
- 海洋研究開発機構
研究予算
- 科学技術振興機構
- 文部科学省