深海微小試料の現場観察のための海中原子間力顕微鏡

新しい深海観測技術の開発

2016

概要

近年、海底の鉱物資源の調査や深海の生態系の仕組みの解明を目的とした海洋探査が盛んに行われている。一般的に、海洋探査では、海水などの試料を採取してからそれを研究室へ運搬し、測定を行うことが多いが、深海現場と観察時との環境の違いや、観察を行うまでの時間経過によって試料の変性や劣化が起こるという問題があった。この問題を解決するため、現場計測を行う様々な化学センサーが開発され、測定データの信頼性向上や調査効率の改善が図られている。しかし、深海に存在する微小試料の観察においては、引き続きサンプリングに基づく従来の手法がとられている。

深海微小試料を現場で観察するための海中原子間力顕微鏡

われわれの研究グループでは、深海微小試料を現場でそのまま、かつ高分解能で観察するための海中原子間力顕微鏡を開発している。われわれの開発している海中原子間力顕微鏡は、試料台、カンチレバー、ステッピングモータ、ピエゾスキャナ、耐圧機構によって構成されている。深海中で動作させるために、試料台は試料の採取から固定までを現場で行うためのフィルターを内蔵し、AFMカンチレバーには、絶縁のためのパリレンコートを施した自己検知型カンチレバーを使用している。本装置を浅瀬海域に投入して動作試験を行ったところ、フィルター表面の孔(直径1.2 μm)を観察することに成功し、実海域で1 μm 程度の微小構造が観察可能であることを確認した。今後は、本装置を海中探査機に搭載して深海での撮像試験を行う予定である。

開発中の現場型海中原子間力顕微鏡システムの運用試験

共同研究

  • 海洋探査システム連携研究センター(東大生研)
  • 海洋研究開発機構

研究予算

  • 日本学術振興会
  • 文部科学省