マイクロ流体デバイスの海洋現場への展開

資源探査、海洋科学、環境計測への応用

2016

概要

深海環境における海底資源探査のための現場型分析装置やセンサにおいては小型・低消費電力化が重要な課題である。高度な機能集積化と小型化、それに伴う低消費電力化を実現できるマイクロ流体デバイスは、可搬型の現場型装置の中核として適している。そこで我々は現場型の化学・生化学分析装置「IISA (Integrated in-situ Analyzer)」シリーズの開発と評価、海域における展開を行ってきた。

マイクロ流体デバイスを用いた深海現場計測

これまでに、海底熱水活動などの生物地球化学的イベントを検出するための新たなツールとして、ルシフェリンールシフェラーゼ(L-L)法を用いたATP(アデノシン3リン酸)の定量、すなわち微生物のバイオマス見積が可能な「IISA-ATP」、さらに連続計測を可能にした「IISA-ATP2」を開発している。実用化を指向したIISA-ATP2の実機は無人探査機「ハイパードルフィン(JAMSTEC)」に搭載され、2013年12月に南西諸島海域における熱水プルーム調査で用いられた(NT13-25 航海)。その結果、ATP濃度の指標となる発光強度の連続現場計測に成功した。pH 等の基礎的な化学パラメータを計測するための半導体化学センサの校正を現場で行うためにマイクロ流体デバイスを集積化した「IISA-pH」の実用化も進行中である。これらの装置は資源開発などの際の環境影響評価に実用が期待できるだけでなく、海洋微生物生態、海洋化学に関する科学研究への貢献も期待できる。

IISA-ATP

共同研究

  • 海洋研究開発機構
  • 高知大学

研究予算

  • 科学技術振興機構
  • 文部科学省