マイクロ流体ニューロン

2014

概要

「マイクロ流体ニューロン」という、生きた神経細胞と同等の電気的挙動を示す新しい人工神経デバイスの研究開発に取り組んでいる。微小流路構造や微小流体の流れを利用してイオンの輸送や交換を行うことで神経シグナルを伝達するマイクロ流体ニューロンを使えば、生きた神経回路網と電気的に接続して信号をやりとりすることができる。実際の神経細胞と、電子回路で神経細胞機能を再現したシリコンニューロンとを組み合わせた研究は多数報告されているが、マイクロ流体技術を用いたマイクロニューロンの研究はめずらしく、神経補綴への応用や神経回路網(ニューラルネットワーク)の機能解明等に大きく貢献すると考えられる。マイクロ流体ニューロンでは、微小流れを制御できるマイクロバルブや、特定のイオンのみを選択的に透過させることができるイオン選択膜といった、マイクロ流体制御要素を組み込むことで、神経細胞機能を実現する。シリコンニューロンよりも生体神経細胞に近い形態を再現できるため、より容易に生きた神経細胞とシグナル交換ができると期待される。

マイクロ流体ニューロンを用いたハイブリッド実験

マイクロ流体ニューロンでは、2つの微小チャンバーの間のイオン濃度差で電位差を生み出し、それの電位差の変化する波形や周波数を制御することで神経の活動電位を模擬する。現在、マイクロ流体ニューロンデバイスと、神経細胞培養デバイスを組み合わせたハイブリッド実験を実施している。このハイブリッド実験により、神経回路網の動作に関する理解がより一層進むと期待される。さらに、ロボティクスの分野においても、このハイブリッドマイクロ流体ニューロンデバイスは制御信号パターン生成器として応用することも考えられる。

ハイブリッド実験のためのPDMSデバイス