ストランド応答性DNAハイドロゲルの開発

2018

概要

DNAハイドロゲルには、光刺激やpH、温度などの外的要素に応答するゲル-ゾル転移機能を付与することが可能であり、生分解性も高いことから薬物送達システム(DDS)への応用が期待されている。従来の研究では多くても2種類の要素に対する単純な応答性に留まっていた。本研究では転移機能のマルチターゲット化を目指し、4種類のssDNAに応答するゲルを設計し、マイクロ流体デバイスを用いて、薬物に見立てた抗体(IgG1)を封入したゲルビーズの生成と抗体のリリースを行った。

種類のストランドから成るモチーフ同士の高次構造によりゲルが形成され、内部に抗体を封入できる。ここにモチーフと相補的なssDNAが加わると、熱力学的安定性から構成DNAが遊離し、ゲルが崩壊する。まず、抗体を封入したゲルビーズの生成を行った。ミネラルオイルにspan80を2%(w/w)で混合したものと、ゲルの構成分子及びIgG1を混合した2種類の溶液をマイクロ流体デバイス内に送液し、直径が約50μmとなるように流量を調整しながら油中液滴を生成した。液滴を静置してゲルを形成させた後、NaClを加えたTE bufferに液滴とイソプロパノールを混合し、ゲルビーズを得た。次にビーズを崩壊させるためにst2とst4の相補的配列をもつストランドを加えた溶液を、ウェルプレート内でビーズと混合し、FAM(st1)とAlexa647(IgG1)の蛍光をタイムラプスで観察した。得られたビーズは安定しており、撹拌後もTE Buffer内でIgG1を保持することができた。相補ストランドを加えた後の観察ではストランド滴下後から徐々にゲルが溶解してゆき、IgG1がBuffer内へリリース様子が確認された。

DNA ハイドロゲル

ハイドロゲルが溶解していく様子

共同研究

  • ロンドレーズ研究室(ESPCI)

研究予算

  • 日本学術振興会
  • フランス国立科学研究センター