PEN DNA toolboxを用いたDNA濃度空間の線形分類器の開発

2018

概要

我が国では高齢化に伴って癌の患者数が増加傾向にあり、2030年における全部位を含めた男性の罹患数は53万人、女性は39万人にも及ぶと予測されている。近年になって遺伝子制御に関わるmiRNAが癌患者の血液において増加または減少するという報告があり、「リキッドバイオプシー」と呼ばれる、血液を採取して血中に含まれるmiRNA濃度の異常性を検査する診断法により、低侵襲、高精度な癌の早期診断が可能であると期待されている。

miRNAリキッドバイオプシーの医療現場への実装は「高精度」、「迅速性」、「低コスト」の全てを満たす必要があるが、現状では上記の条件に合致する検出法がない。本研究ではDNA toolboxを用いたmiRNAの検出方法を構築することで、前述の問題点を解決する。DNA toolboxはRondelezらによって開発された、計算能力を持つ化学反応ネットワークである。伸長、切断及び分解を司る酵素と、テンプレートDNA(入力DNAとハイブリダイズしアウトプットDNAを出す配列の一本鎖DNA)の濃度、配列を決定し、化学ネットワークをデザインする。ネットワークはインプットされた標的DNA・RNAの濃度をインジケータDNA(計算結果として出力されるDNA)の増減によって評価できる。DNA toolboxは「低濃度」の入力DNAを種類特異的に検出できる。さらに検出と複数種の濃度コンピューティングを同時に行うことができるため、インキュベートのみで完了する「迅速」な診断が可能である。また、試薬の「コストが低い」というメリットも合わせ持つ。

PEN DNA toolbox を用いた化学反応ネットワークの設計とチューニング 液滴プラットフォームを利用したDNA 濃度空間の線形分離評価

共同研究

  • ロンドレーズ研究室(ESPCI)

研究予算

  • 日本学術振興会
  • フランス国立科学研究センター