マイクロフィルタと抗体修飾表面を利用したCTC分離用マイクロ流体ウェル

2014

概要

血中を循環する腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell: CTC)は血行性のがん転移の主因であると考えられている。血中のCTCを計数した後に仔細な解析を行うことで、がん診断や治療に有用な情報を得ようとする臨床応用が期待されており、高感度にCTCを分離検出する技術が近年大きな注目を集めている。しかしながら、CTCは血中にごく稀にしか存在しておらず(数個/10 mL)、膨大な数の血球細胞群に埋もれているため、その検出は困難である。これまでに、CTCの細胞表面に発現しているマーカーに対する抗体を修飾した表面を用いてアフィニティでCTCを分離する手法や、CTCの細胞サイズが白血球より大きいことに着目し、マイクロフィルタを用いてフィルタリングで血球細胞から分離するマイクロ流体技術が提案されているが、そのどちらか一方を用いた分離ではCTCの細胞サイズや表面マーカーの発現量のばらつきにより分離のロスが生じることが懸念されていた。これらの問題を解決するために、われわれのグループは、マイクロフィルタと抗体修飾表面を利用したCTC分離法を提案しており、それをマイクロ流体ウェル上において実装し、血液サンプル中の前立腺がん細胞を血液サンプル中から分離することに成功している。

マイクロフィルタと抗体修飾表面を利用したCTC分離

CTC分離用マイクロフ流体ウェル(左)とウェル上で捕捉された前立腺がん細胞(右)。マイクロフィルタの高さは7.5μm。

共同研究

  • 蛋白質創製研究部(がん研究所)

研究予算

  • 科学技術振興機構