多能性幹細胞の分化誘導培養のための異なる種類のECMタンパク質がコーティングされた表面の形成技術

2015

概要

幹細胞の接着に関わる細胞外マトリックス(extracellular matrix: ECM)からのシグナルは、細胞運命を決めるパラメータのひとつとして知られている。それゆえ、高い空間分解能を持ちつつ、異なる種類のECMタンパク質がコーティングされた表面を形成する技術の開発は、分化した幹細胞からなる複雑な組織を構築する上での鍵となる可能性を持つ。これまでに,ECMタンパク質のコーティングにマイクロ流体チップを用いる手法が報告されているが、現存の手法では、二つのチップ(一つはコーティング用、もう一つは細胞培養用のチップ)が必要であり、チップの位置決めには困難なアライメント作業を伴う問題がある。この問題を解決するため、我々のグループでは、partial barrierと呼ぶ微小構造を持った液体位置決めバルブを利用する手法を提案している。この位置決めバルブによりデバイス内のマイクロ流路内の任意の位置で気液界面を形成することが可能となり、結果として、高い空間分解能を持ったコーティングが可能となる。また、デバイス内に、細胞の凝集体を位置決めする柱構造を持たせることで、幹細胞の胚様体の位置決め並びに異なる種類のECMタンパク質(ここではラミニンとビトロネクチン)をコーティングした表面での培養が、一つのチップで可能となった。

液体位置決めバルブにより形成された気液界面と、2種類の蛍光修飾ウシ血清アルブミンのコーティング結果

ラミニンとビトロネクチンをコーティングした表面での胚様体(miPS細胞)の培養。全てのスケールバーは200μm。

共同研究

  • 蛋白質創製研究部(がん研究所)

研究予算

  • 科学技術振興機構