細胞シグナリング研究のための細胞培養マイクロ流体システム

2015

概要

シグナル分子濃度の時間的変化(濃度波形)が細胞の働きを選択的に調節するという新しい概念が提示されている。シグナル分子濃度波形に対する細胞の応答を調べるためには、細胞周囲の分子濃度を動的に制御する必要があるが、従来のピペットを用いた溶液の交換では極めて難しい。そこで本研究では、細胞周囲のシグナル分子濃度を様々な波形に沿って制御する細胞培養システムを開発した。Y字状の流路の2つの入口から、2台のシリンジポンプを用いてシグナル分子濃度を含む溶液と含まない溶液を送液し、流路内で2液を混合する方法により、様々な濃度波形を作り出すことに成功した。マイクロ流路の設計を工夫し、2液の混合にかかる時間を短縮した。さらに、シリンジポンプの流量比の変化を精密に流路に伝えられるよう、ポンプとマイクロ流路を接続する管路系を変形しにくい硬い素材で構成している。

構築したシステムによる分子濃度制御を、蛍光色素を使った実験で確認したところ、矩形波と三角波を安定的に作り出すことができた。さらにその応用例として、ATP濃度波形に対するCHO-K1細胞の細胞内Ca2+濃度応答を測定したところ、2種類のATP濃度波形を作り出した場合で異なる応答が測定された。これより、細胞間のシグナル伝達の研究におけるシステムの有用性が実証された。

2液の流量比によるシグナル分子濃度の動的制御

CHO-K1細胞の細胞内Ca2+濃度応答

共同研究

  • 黒田研究室(東京大学)

研究予算

  • 科学技術振興機構