酸素濃度勾配と肝機能の変化

Liver zonation実現のための肝細胞培養システム

2018

概要

新薬開発における動物実験の代替法として、摘出した肝臓やそのスライス片などと薬を生体外で作用させる方法の開発が重要視されているが、このような生体外試験方法では、肝細胞が有する複数の肝機能を適切なバランスで同時に再現することが難しいことが課題として挙げられている。生体内において肝細胞は、置かれた環境の酸素濃度の違いによって異なる肝機能を発現すると考えられている。従って、生体内における肝機能を生体外で再現するためには、酸素濃度勾配を含めた生体内環境の再現が必要であると考えられる。このような肝機能の変化や酸素濃度勾配を含めた肝臓内環境のことをLiver zonationと呼ぶ。

酸素濃度勾配を形成できる肝細胞培養デバイス

我々の研究グループでは、Liver zonationのin vitro再現を目標に、肝組織内の酸素濃度勾配に対応した細胞機能を解析することが可能なデバイスの開発を進めている。細胞の酸素消費を用いて上流から下流にかけて酸素濃度勾配を形成可能かつ、内部の酸素濃度を可視化可能なシート型蛍光酸素センサを搭載した、還流型の肝細胞培養デバイスを開発し、Rat初代培養肝細胞を培養した際に、HIF-1α、CYP3A2をはじめとする複数のタンパク質の発現において、上流(高酸素)と下流(低酸素)を比較したときに生体内と同様の発現結果を得ることに成功した。また、より詳細な細胞応答の解析のための、細胞の局所的回収が可能なデバイスの開発や、解熱鎮痛剤を用いた薬物実験による薬物代謝の再現にも成功した。

デバイス内の酸素濃度勾配と対応するタンパク質発現結果

共同研究

  • 酒井研究室(東京大学大学院工学系研究科 化学システム工学)
  • E. Leclerc(東大生研)

研究予算

  • 科学技術振興機構