単一細胞解析

新しい細胞解析ツールの開発に向けて

2017

概要

細胞内の遺伝子発現、タンパク質合成、代謝物質の合成と分解などが乱雑に変動しているため、同じゲノムをもっている細胞集団を構成する細胞でもその性質が不均一であることが明らかになった。しかし、従来の実験方法では細胞性質の平均値しか得られないため細胞個々の性質を把握するのは困難である。新たな実験ツールとして、われわれは、単一細胞を効率良く解析することが可能なエレクトロアクティブマイクロウェルアレイを開発した。エレクトロアクティブマイクロウェルアレイは、各マイクロウェルの底面に電極を配置することで、細胞を一つずつ各マイクロウェルにトラップすることが可能な技術である。このデバイスを用いて、多数の単一細胞を同時に解析し、細胞内ATP濃度分布の解析が行えることを示した。

エレクトロアクティブマイクロウェルアレイ

近年では、マイクロ流路とマイクロウェルの構造を改良することで、サンプル内に存在する少ない細胞を効率よく捕捉できる新しいエレクトロアクティブダブルウェルアレイを開発した。マイクロウェルをその機能の違いによって、捕捉用ウェルと反応用ウェルに分離し、細胞に作用する静電力・流れのシミュレーション結果に基づき、各ウェル構造の最適化を行った。本デバイスを用いて、モデル細胞として希釈された前立腺腫瘍細胞をマイクロウェルアレイにトラップした結果、303個の細胞中288個の細胞を捕捉できる(捕捉効率95%)ことを確認した。細胞を捕捉した後、本デバイス上で高感度の解析を行うことによって、例えば、血中循環腫瘍細胞などの血液にわずかに存在する細胞の単一細胞解析が可能な新たなマイクロ流体デバイスの開発が期待される。

エレクトロアクティブダブルウェルアレイを用いた細胞捕捉の様子

共同研究

  • 理化学研究所

研究予算

  • 日本学術振興会
  • 科学技術振興機構

参考文献

  • Kim, S. H., Yamamoto, T., Fourmy, D. and Fujii, T.: Small 7 (2011), 3239-47.
  • Kim, S. H. and Fujii, T.: Lab Chip 16 (2016), 2440.